やくざいしめんきょもってるだけ

26歳から薬局長を勤めたいち勤め人の思うこと

社畜薬剤師と思ったら「資本論」(漫画)を読んでみたら良いと思う。

 

資本主義における給料のカラクリを学ぶ機会がありました。

 

その際に漫画の「資本論」を使用しました。

作中では地主とパン屋を題材に話が進んでいきます。

 

資本論の理解を深めるために、

もっと自分に身近であった薬局薬剤師に当てはめて考えてみました。

 

この記事を読むことによって、

いかに薬局薬剤師が搾取されているのかが理解ができます。

 

 

資本主義における商品の考え方

 

資本主義において薬局経営者が扱う商品は表の商品と裏の商品の2種類あります。

 

表の商品とは、「保険調剤というサービス」

裏の商品とは、「薬剤師という労働力」

 

ここで少し疑問に思うかもしれません。

 

「保険調剤というサービス」は薬局経営者が売るもの。

として理解が出るが、

 

「薬剤師という労働力」は薬局経営者が買うもの。

 ではないかと。

 

 

表の商品、裏の商品を理解する

 

「保険調剤というサービス」の売上を100だとするとその内訳は

 

保険調剤というサービスを提供するためにかかる費用を60

薬剤師の賃金を20

経営者の利益を20

 

と仮定しましょう。

 

要するに「保険調剤というサービス」にはあらかじめ利益というものが乗せられています。

そうしないと、薬剤師と経営者は飢え死にしてしまいます。

ただでサービスを提供している訳ではないのです。

 

資本主義社会において薬剤師の労働力が商品になると述べました。

労働力が商品である以上そこには利益が存在します。

 

労働力の利益とはいったい何なのでしょうか?

この場合、薬剤師の労働力の原材料を考えてみます。

 

労働「者」ではなく、労働「力」が商品である以上

この場合薬剤師の労働力に当たるのは、「人間の体力・気力」となります。

 

これを「労働力の再生産費」と呼び、

「1日の疲れを癒し次の日また元気に働けるようになるための費用」のことです。

言い換えると「生活費」です。

 

労働力は裏の商品であるため、薬局経営者の視点から言うと、

「薬剤師の賃金から労働力の再生産費を差し引いたものが薬剤師から得られる利益」となるのです。

 

以上より、表の商品と裏の商品があることを理解していただけたかと思います。

 

 

裏の商品(労働力)の扱い方

 

ここで薬剤師の賃金を労働力の再生産費ギリギリの10だけ支払えば良いとしたら、

経営者の利益は30に増えます。

 

保険調剤というサービスを提供するためにかかる費用を60

薬剤師の賃金を10

経営者の利益を30

 

これでは労働者が文句を言います。

文句を言うが、生活はできるわけです。

 

文句を言うのであれば辞めて自分で経営しろという話になります。

労働力である薬剤師は経営者に賃金を増やせと言える立場にはないのです。

 

もちろんこの手の薬剤師の主張を薬局経営者は認めません。

薬剤師の多くは代替可能な労働力にすぎず、勝手に辞めるのを待って、辞めればまた別の薬剤師を採用すれば良いだけの話なのです。

 

 

表の商品と裏の商品の最大の違い

 

表の商品である「保険調剤というサービス」は無数の人間が買ってくれます。

1人に買ってもらえなかったとしても、また別の人間に買ってもらえれば良いわけです。

 

「薬剤師という労働力」という裏の商品は経営者や資本家といった特殊な客のみが買います。

 

経営者や資本家しか買わない商品である以上、その価値(賃金)は経営者、資本家が自由に決めて良いものとなります。

 

この辺で、薬剤師の給料がどう決められているのか想像がつくかと思います。

 

薬剤師の給料はどれだけ頑張ったかとか、どれだけ会社に貢献したとかで決まっているのではなく、

業界の相場近くに見せかけているだけで、経営者の独断で決められているだけなのです。

 

労働力から利益を得るというのは雇われ薬剤師をしていると全く思いつかない視点ですね。

 

 

「余剰価値」

 

薬剤師という労働者から得られる利益を「余剰価値」と言い、

経営者は上記のように薬剤師から余剰価値を搾り取っているわけです。

 

薬局経営者には

「俺は国民の健康のために薬剤師を雇い医療を提供しており、搾取なんてしていない」

と反論をされそうですが、言い方はどうでも良いのです。

 

「奪う」でも

「ありがたく頂く」でも

「当然の対価」でも

 

なんと言おうと、構造的にそうなっているのでが事実です。

 

薬局経営者は薬剤師という労働者の「余剰価値」を吸い上げて私腹を肥やしているのです。

 

労働力の再生産費が安い人間ほど持っている余剰価値が高いとみなされます。

つまり生活費が安ければ安いほど余剰価値が高いのです。

 

薬局経営者は薬剤師に対し、「やりがい」「成長」「スキルアップ」といったキラキラビジョンを売り文句に低年収で働かせて利益を得ます。

 

企業文化によるところもありますが、長時間労働が当然だったり、残業代を出し渋る風潮がある薬局は要注意です。

 

そういう企業文化を作っておけば、後から入社した人にそれが当然という空気を押し付けられるので経営者としては都合が良いのですが、薬剤師としてはたまったものではありません。

 


搾取されない薬剤師になるには

 

自分で薬局をやるのが一番の近道ですが、薬剤師全員が薬局を一から作れるノウハウや資金を持っているわけではありません。

 

またこの構造上、サラリーマン薬剤師であるうちは搾取の対象からは逃れられないのですが、自分は搾取されていると感じている薬剤師のせめてもの抵抗として残る手段は2通りあると考えられます。

 

1点目はキッチリ残業代を請求することです。

上司と対立するのがいやで泣き寝入りしてしまいがちですが、何もしないよりはマシです。

残業代を請求してもサラリーマンは即刻首にされることはありません。

 

2点目は派遣薬剤師を利用することです。

薬局経営者は正社員の変動費としての残業代は極力抑えようとしますが、時給単位で派遣薬剤師を利用する場合は正社員より高単価で薬剤師を利用する傾向にあります。

 

日本全国地域さえ選ばなければ、時給4000〜5000円の薬剤師の求人はあるわけです。

ただし、正社員は即刻首になるというリスクはありませんが、派遣の場合その価値を提供できなければ派遣契約の解除にあうことも可能性としてはあるわけです。

 

 

最後に 


この漫画の資本論を読むことによって、薬剤師の時間が経営者に吸い取られ、それが企業や経営者の利益になっていることがわかります。

 

いまいちど自分の給料はどのように決められて、どのように支給されているのかお金の流れを考える機会を持つのも良いかと思います。